新アイドルの追加(2018~19)に何が起きたか、1年後の今振り返る


 本記事は2018年12月~2019年4月にかけて
 シンデレラガールズに追加された7名のアイドルについて、
 コンテンツのこれまでの形とともに振り返る内容となっております。

 また、同時投稿で新アイドルに対する印象調査も投稿しているため、
 そちらもよければご覧になってください。

 先に結論を述べると「苦手・嫌いと思う人はとりあえずそっとしてやって」




【0章】シンデレラガールズとアイドル追加の文化

 ※なんでああなったかに至る過程の話です

 シンデレラガールズ(以下デレマス)とは何か、
 と問われればアイドルマスターの派生コンテンツである。

 ではその特徴を問うならば、筆者はこう答える。
 「アイドルがやたらとにかく出る。めっちゃ多い」

 デレマスは2011年にmobageで産声をあげた(以下モバマス)
 モバマスのサービス開始時、デレマスで初登場したアイドルは実に84名に上る。
 この数字は本家アイドルマスター765プロの13名と
 トレーナー3名(当時ルーキートレーナーは未実装)を合わせると99名になる。半端な。

 モバマスはゲーム分類としては『カードバトルRPG』にあたる。
 要は他のゲームで戦士やモンスターがやっていることを
 アイドルゲーに無理やり落とし込んでいる。
 攻だの守だとのいったステータスはその名残。

 7年以上やってるけど未だにわからん。


 モバマスが画期的だったのは
 登場キャラ全てに最初から24種の台詞とプロフィール、特訓前後のイラストがあり
 その全てがアイドルごとにユニークであり、8年経ってなお使い回しがないこと。(※)
 ※一部例外的に招待報酬のアイドルやスマイル差分のカードのみセリフは共通

 ゆえにP(プレイヤー=プロデューサー)は各々が自分の選んだアイドルを好いていったし
 情報が足りない分その子がどんな子か深く考え想像し、思うがまま掘り下げていった。
 アイドル達は再登場により新たな表情を見せていく。
 多くのプレイヤーたちはその活躍に一喜一憂し、沼にハマっていくのだ。ずぶずぶ。

 一見変な性格をしていても掘り下げていくと実は…なんてことは日常茶飯事で、
 「みんなこう思ってるだろうけど実は~」と語りたくなる楽しみもある。
 というかデレのアイドルは誤解を受ける前提な節があり
 あるカードのセリフを知っているか否かでガラッとイメージが変わることも少なくない。
 100名以上いる手前、全員の情報の網羅は不可能に近い。
 そんな時は熱心な担当Pに話を聞くのだ。実にソーシャル(社会的)している。

 中にはCDデビューを果たし売上ランキング入りで話題を呼ぶ者、
 重課金で担当Pの悲鳴を界隈の外まで響かせる者も出る中、
 新しいアイドル達も追加されていった。

 それこそ誰が見ても美少女!という子も入れば、何だこの変な子!という子まで。
 具体的に書けばサービス開始から約1ヶ月(2011年内)に22人
 2012年には51名ものアイドルが追加された。増えすぎだろ。
 ざっくりこの13ヶ月だけで73名(月に5.6人ペース)である。増えすぎだ。


 しかし、以降徐々に追加アイドルはその数を減らしていく。
 エリア追加アイドルが4名から3名、3名から2名、そして1名になり
 2014年には桐生つかさを最後に新アイドルは登場しなくなった。
  
  

 原因は単純で、アイドルを増やしすぎたのだ。追加せずとも多かったが。
 1人1人のキャラに対し多くの熱心なファンがつくこのコンテンツにおいて
 イラスト・テキスト量が膨大な上、全員を再登場しようとすれば明らかに供給が足りない。
 第一この量の登場人物を扱うゲームなら絵と一言台詞みたいなキャラ設計をしてない限り
 大半のキャラは複数回再登場しないのが普通である。

  

 しかしデレマスのゲームではその選択をしなかった。
 実際にアニメでも武内Pは美城常務の「切り捨てろ」という提案を蹴っている。
 (個人的にこのあたりのくだりは運営の独り言だと思ってる)

 金を稼ぎたいだけなら人気キャラだけ再登場させればいい。にもかかわらず、
 例え時間がかかろうと、デレマスは全員が再登場する道を選択した。
 イベント限定アイドルや黎明期特有の一発ネタっぽいアイドルの再登場に
 「全員を再登場させてくれるもの」とプレイヤーも期待した。

 ※なお、そもそもアイマス自体が「アイドルを切り捨てる」ことと
  致命的に相性の悪いコンテンツであったことも判断要因として上がる。
  実際デレマス以前のアイドルマスター2の騒動もそれが最大の焦点となっている。

  また、デレの運営はとにかく意思表示をしない。
  おおよそデレの総合ディレクターだった石原章弘氏が退陣して以来
  今後のコンテンツがどのように進んでいくかの指針や保証はさっぱりなく、
  出てきたものに対しプレイヤーが各々に解釈してるのが今も昔も常である。


 だが現実は厳しいもので、最初期に実装したアイドルでさえ
 モバマスで再登場が完了するまでに22ヶ月かかっている。
 その頃にはアイドル間の登場回数やレアリティ・戦力の差も大きく開いていった。

 もっとも運営も慈善事業でない以上、
 儲けられるようキャラの登場(ガチャ・イベント上位)の方針を定めるのは当然である。
 無課金に優しく長生きできなかったゲームは枚挙に暇がない。
 実際長くゲームに付き合ったプレイヤーからすればそれ自体は理解しており、
 仕方ないことだと思う傾向にあった。
 (平等が無理な以上、平等感を与えるのがうまい運営の仕方だが無理のある話である)

 しかしスマホが到来し携帯ゲームもリッチ化が進み、モバマスにもその余波が押し寄せる。
 2013年には早くもプレイ人口が減少に転じ始め、プレイヤー達の間に不安が走る。
 「近い将来デレマスはサービスを終了し、なくなってしまうのではないかと」
 新アイドルの追加減少もその不安に拍車をかけるものだった。
 話題を呼ぶよりも保守に走らざるを得ないのだと。
  
 
 2014年、アニメ化が発表。アニメ化はその後の展開がピンキリなため
 不安視の声もあったが、これによってコンテンツ存続への不安自体は一応解消された。

 が、同時にアニメの性質上その時点で声優が就いていないアイドルの登場が絶望視された。
 そのことに悲観しゲームから去る人も多かったことを筆者は覚えている。
 ただしアイマス自体が初期からいつまで続くかわからない不安の絶えないコンテンツであり
 全体的にプレイヤーが悲観的な傾向にあるというのはある。

 残った人はボイスのある・ない差について意識が強くなった時期であった。
 総選挙がボイス獲得に向けた傾向になり始めたのもアニメ前後の時期であり、
 アニメの評価に「自分の担当が出られなったこと」を加味するファンは少なくない。

  

 2015年、アニメの放送中にデレステが発表される。
 その以前に発売されていたG4U!の登場アイドルがごく一部に限られていたことや
 3Dモデル作成の困難さから、プレイヤーは
 「実装されるのは運営が推す一部のアイドルだけ」と半信半疑の見解を示していた。

 蓋を開けてみれば、これも26ヶ月と時間はかかったものの
 日本版モバマスに登場したデレマスオリジナルの183名全員がデレステに実装された。
 しかしモデリングが当初は微妙だったりテキストの質の差、
 その間の登場回数などやはり人数の多さに起因する課題は山のようであった。
 それは今もなお続いている。


 「なあ、次はどんな新しいアイドルが出ると思う?」

 初期によく話題にされたこの予想ネタも、
 人数の多さゆえの弊害を目の当たりにするにつれ次第に予想から冗談となっていった。
 これ以上アイドルが追加されれば
 ただでさえ登場機会の少ない子やその担当Pがどうなるかを考えれば仕方ない。

 だが、それでも多くのプレイヤーは現状の課題を無視できるなら心のどこかで
 「新しいアイドルを話題にするデレマスの楽しさ」も期待していた。




【1章】2018年、新アイドル追加発表

 2018年12月1日、6th名古屋公演の終盤それは突如やってきた。
 7名の新アイドル追加の予告。それを聞いて筆者に芽生えた感情は2つ。


 1つは新たなアイドル誕生に対する喜び。

 前述の通り、シンデレラガールズは新たなアイドルを追加することで
 外部の話題を呼び、プレイヤーを増やしてきたゲームだ。
 新しく追加されたアイドルに対し「かわいい」「担当にした」「変なやつが増えたぞ!」
 などと喜びの声を上げたあの体験が再びできるのだ。

 同様に期待を懐き、多くのプレイヤーは7人がどんなアイドルか、想像し楽しんだ。


 もう1つは漠然とした不安。

 これも前述の通り、デレは人数の多さこそ最大の魅力であるが、
 同時にそれに起因する弊害の耐えない設計である。

 1人のキャラクターに対し何の供給もなく1年・2年ファンを続けるというのは
 中々できることではない。
 これに対し、リフレッシュルームやデレぽ、ススメ!シンデレラロードイベントの導入など
 供給自体は増えたもののやはり焼け石に水感は否めなかった。

 また実は2018年という年はその不安を増長させる要素に溢れた年でもあった。
 カード追加ペースの遅さ、アニメからの人口流入を前提としたボイスありきの展開を 
 プレイヤーも理解しきった頃であり、またモバマスに比べ明らかに人口の多い
 デレステでの担当アイドルの展開、特にSSRを望む声はますます強くなっていた。
 (ちなみにセリフ量で言えばデレステのカード1枚はモバマスの3~4枚分に相当する。
  3Dモデルも含めペースの遅さは当然であり、
  またボイスありきの展開も
この時代のゲームとして当然といえば当然)

 にも関わらずこの年はそれまで1枚限りと思われていた恒常SSRが2枚に増え
 イベントで歌唱したユニットの課金衣装や衣装SSRが作られた。
 実際グラフにすると2018年8月~19年3月のSSR1枚目達成者の少なさが分かる。
  

 そもそもこれまでに実装したSSRは総選挙の順位を参考にしているように見えるなど、
 それらの傾向は恒常SSRを渇望していたPを悲観視させる展開が続いた。
 前述の通りデレの運営はなんら意思表示をしないため、
 いつ何を出すといったメッセージはない。

  
 3周年の当時、自分の足で歩けシンデレラというガルフロの歌詞が大きく話題になったが、
 歌詞に問題はない。ただ長年溜まった不安の水量がたまたま器をオーバーしたのが真相。


 最低でも全員の登場機会が新アイドルの分だけ削られる
 下手をすればそのアイドル達が今後メインとして扱われるのでは、
 そんな不安を抱き、またも絶望したPがコンテンツから去り、残った者も困惑した。

 だが、全体で見れば楽しみという声の方が圧倒的に多かったのも事実である。
 (不安になる事情を理解していない、あるいは気にしないPの方が多かったから)



 そんな期待と不安の間、新アイドルはんごー!んごー!と産声を上げた。




【2章】辻野あかり編

  
 2018年も末、最初の新アイドルがその姿を表す。
 オーソドックスに可愛い容姿、都会慣れしてない性格と普通オーラの裏腹に
 話題になったのはその某板住民を想起させる特徴的な語尾。
 ギャグキャラがたまたま使ったわけではなく、
 注目の集まっていた明らかに普通の女子学生新キャラが放ったその語尾は
 瞬く間にネットを駆け巡り、Twitterでもトレンド入りするなど話題は持ち切りとなった。
「デレマス」新アイドルは“なんJ民”!? 
https://animeanime.jp/article/2018/12/20/42243.html
 筆者はこれを喜んだ。いや語尾の話はともかく。

 あかりがデレステではなくモバマスにまず実装されたこと(後述)
 そしてモバマス発の話題がこんなにも多くの反響を得たこと。
 シンデレラガールズにはそれだけの力がまだまだあるんだ、と。
 
 モバマスのカード1枚あたりのセリフ量は24と少ない。
 だが、その中でも掘り下げは進み、あかりが某板の住民などではなく
 ネットに騙された情報弱者系女子であると判明すると、またそれも話題となった。

 「変な子が出てきて、実はこんな子で~」
 デレマスらしい、語りたくなるアイドルだと膝を打ったものである。
 早くも自分の担当アイドルと絡ませようとする動きも活発だった。
 「これ以上変な子がくるのか?」と疑問視する人も。




【3章】砂塚あきら編
  
 翌年1月、再び新アイドルはトレンド入りをもって迎えられる。
 2人目のあきらは口調以外は比較的普通路線であったあかりと異なり、
 現代っ子特有のマイペースさ、個性へのこだわり、
 ゲーム実況配信者、ファッション趣味、ギザ歯など属性てんこもりである。

 こちらも実は妹キャラであったりFPS趣味、色んな服が着られるので意外と乗り気、
 と一見ニヒルなように見えて特訓後は年相応の笑顔を覗かせるなど、
 クール属性に多いギャップやコンプライアンス意識の高は好印象だった。

 そして容姿は多くの絵描きの目に止まり、ファンアートがみるみる増えた。
 実際にPixivのイラスト投稿数は登場1ヶ月を待たず1000件超え。
 その勢いはアニメ放送当時の凛に比肩すると書けば凄さが伝わるだろうか。

 不安よりも「次はどんな子がくるだろう」というワクワクが勝りだした。


 一方、その人気ぶりからやはり今後の展開に影響を及ぼすのでは
 (具体的には総選挙の上位入賞・早期のSSR化など)
 と、不安視する声もあった。
 仮に総選挙の上位入賞によるボイス確定枠に彼女たちが食い込めば
 「この子がいなければあの子に声がついていた」となってしまう可能性もあった。

 まあ的中するんだけど。



【4章】夢見りあむ編

  
 さらにあきらから1ヶ月待たずして登場したのは
 ある意味デレ最大の問題児であり、被害者でもある。
 
 基本的には現実にいてもそこまで違和感のない髪色多いデレにおいて
 明らかに人工色な髪色、それで外歩いてるの?という奇抜な服というかシャツ、
 そして何よりネットに毒されきったりあむ語録の数々とザコメンタルっぷり。
 あと初見ホイホイな胸

 あまりの異色っぷりに、当初は語尾のせいで「これ以上変な子がくるのか?」
 と疑問視されたあかりがまるで特徴なしに見える始末。
 当時はなぜりあむがこういった発言をするのか理由づけされておらず、
 本気で厄介なキャラとする見方も少なくなかった。


 以上の3名は
 ・最初に追加されたのがモバマスである
 ・名前がひらがな3文字であり、3人で3属性きれいに揃っている
 ・ネットに騙された者、ネットを使いこなす者、ネットの使い方が悪い者と
  現代らしいキャラ造形になっている。
 ・後述の新アイドル4名の扱い
 から公式・ファン両方から3人1セット扱いが定番となっている。
 

 と、りあむまで3名が登場した時点での印象だが、
 正直なところこの時点の界隈の空気は新アイドル発表当初よりも良いように思えた。

 もちろん前述の不安から新アイドルに対する拒否感を示す者もいたが、
 そういった人は既にやめてしまったかスルーすることを選ぶ者が大半だったし、
 人は慣れていくものである。

 初期の扱いもいわばモバマス流で特別優遇されたものでなかった。
 
にも関わらずあかり達3名はTwitterのトレンド入り、ファンアートの激増など
 多くのプレイヤーに対する人気、実績を示した。

 彼女たちが新しいファンを呼んでくれるならデレの未来にも貢献してくれる。
 「不安だったけど、新しく追加された子とも良くやっていけるかもしれない」
 そんな淡い想いを抱くプレイヤーの前に現れた2人に界隈はざわついた。




【5章】黒埼ちとせ・白雪千夜編一番長いやつ
  
 2月の末、プレイヤー達は月末イベントを前に
 「ユニットの新曲かな?」「それともwhite againかな?」などとめいめい想像していた。
  
 突如デレステの告知文に現れた知らない名前・聞き覚えのない声に人々は混乱した。

   
 あかり達と同じように追加していくと思われた4・5人目には
  ・ボイス
  ・ユニット楽曲
  ・↑のイベントコミュ
 と多くのPが渇望するような要素をVelvetRoseは持って現れた。
 それらはいわば新アイドル追加決定時に不安された
 新アイドルへの優遇措置だと多くの人が捉えることになった。
 もっとも何度か書いているがデレの運営は全く意思表明をしておらず
 何かを反故にしたわけでもなく、ただこれまでの慣例と異なることをしただけである。
 最初から担当声優を据えた動きも現代アイドルゲーとしてはむしろ自然。


 以下は彼女たちへ否定的な声が上がったと原因と強く推測させる要因である。

 1.運営とVelvetRoseの同一視

  個人的にこれが最大の要因と考えている。

  多くのアイドルが何年もかけて獲得した物を持って現れた彼女たちから発想を飛躍させ
  特定アイドル以外の冷遇や特定層の切り捨てが目的であると捉え、
  その象徴として彼女たちが見られてしまったという見解。要は刺客扱いである。

  当時SSR登場アイドルを狭める傾向だったこともあり、
  彼女たちを受け入れること=当時の運営の方針を肯定することと考えてしまい、
  無条件否定に走ってしまったパターン。

  これはボイス待ち・初SSR待ちアイドルの担当ほど当てはまると思われがちだが、
  実際にはボイスあり、SSR持ちアイドルの担当であっても陥った人がいる。
  なぜなら今に至っても手持ち楽曲が少ない・SSRが1枚しかないアイドルは多く、
  それが幸運や努力の果てに至ったものであればなおさら初期所持に抵抗が入る。
  さらにはそういった人を友人・知人に持っていた人にまで影響は波及。
  不信を爆発させる友人を前にし、歓迎する発言などできるだろうか?

  もちろん文句を言うべきは運営なのだが、彼らからすれば彼女たちも運営扱いである。
  多くの人が大事なものを守るために槍玉を投げる事態となってしまった。

  実際落ち着いた後は運営とアイドルを切り離し冷静に考える人も多くなっている。

 2.プレイヤー間同士での殴り合い

  実際に殴ってるわけでなく、言葉のドッジボール…ですらなく
  火力マックスのボンバーマンである。

  そもそも新アイドル登場決定の時点から界隈はピリピリしており、
  日和見派も過激派も入り乱れての大論争状態となってしまった。
  当然心無い言葉は出てくるし、嘆いている人を慰めようとした言葉が
  傷口に塩でしたなんてケースも多分に見られた。
  主語は大きくなるし言葉は迷走するもので「受け入れられなきゃやめれば?」
  と別方向の誰かにつぶやいたはずの言葉が関係ないところに着弾するなど、
  仲間のはずのプレイヤーの言葉をトドメに界隈を去ってしまった人も少なくはない。
  筆者自身、当時多数の無責任な発言をしたことを自戒している。
  Aの理由で起こってるのにBの説明したりとか。

  実はかつてアイマスで大きな衝撃となったアイマス2騒ぎの際も
  これと似たような現象が起きている。
  プレイヤー間トラブルの恐ろしさは今後に伝えていきたい。

 3.ちとせ・千夜への誤解
  
  先に書いた通り、デレマスは誤解上等なところがあり、
  キャラ像をミスリードさせておいて実は……と楽しませる傾向があるのだが、
  この時ばかりはそれが悪い方向に働いた。

  ただでさえ両名とも賛否の別れやすいキャラメイクになっているが、
  ちとせの挑発的な言動、千夜の不躾な呼び方などは
  上記で不安定になっているプレイヤーをさらに不安にさせるものだった。
  実際のところちとせは思ったことを率直に言うタイプであり嫌味とは無縁だし、
  千夜は元々対人面に難があり「お前」呼びもちとせに仕える同僚的な側面がある。

  だが、それらはしっかり自分でキャラを掘り下げてようやくわかる事項であり、
  まとめサイト頼りであったりイベントコミュをさらっと見た程度では
  わからないことであった。ナメた(ように見える)発言の数々も
  前述の刺客扱いした人からすれば違った響きに捉えられたことだろう。

  その上デレステでの登場はただでさえセリフ量が多い。
  例としてあげればあかり達の初登場時のセリフはいいところ30程度だったのに対し
  ちとせ・千夜はそれぞれ200近いセリフ量がある。
  (カード1枚に58セリフ+メモリアルコミュ+特訓後コミュ+イベントコミュ)
  さらに2人ともアイドルになる以前から関係性があるため、
  1人を知るには2人とも把握する必要がある、
  そもそもイベント楽曲コミュは歌詞をベースに話を作ってるところがあり
  しっかり読み込むためにはハードルが高かったのである。
  結果としてエキセントリックな言動ばかり注目されることとなった。
 
 4.デレマスっぽくない

  いくつか原因と考えられ要素はあるが、前例のあるものとないものがある。
  ・(ちとせのウワサを信じるなら)人外アイドル
   →まずデレには未だに普通の人間と断言されてないイヴ・サンタクロースがおり、
    オカルトを完全否定する世界観ではない。

  ・他アイドルとは話の中で関係を作っていくものなのに
   姉妹以外で最初から他のアイドルと関係性を持っている
   →これは明確な前例があり、同様にイベントで初登場した
    ニューウェーブ(さくら・泉・亜子)が該当する。
    ただし2012年当時その事に対し否定的な見解はほぼ見られていない。
    イベントの苦行っぷりの話ばっかりだったし。
    ただしFascinateコミュに杏以外の他のアイドルが登場しないのは違和感だった。
    (通例ならイベントコミュは5名で持ち回りである)
  ・百合っぽい
   →実際にセリフを見ればわかるがそういった関係の明言はない。
  ・"死"の概念を持ち込んだ
   →これは実際に異例要素である。ちとせは短命疑惑、千夜も両親焼死疑惑がある。
    デレの世界は基本平和で、183名のアイドルがいても
    自身や家族の死を匂わせたアイドルはほぼいない。
   (二次創作で殺されがちな加蓮も公式では元病人止まりだし、
    母に一人手で育てられた美紗希は解釈余地あり、肇の祖母の死も自然な流れ)
    死は感動系の要素として非常に強く、安易なウケ狙いと取る人もいた。
    なお、アイマス全体で言えば如月千早や桜庭薫など家族の死要素は稀にある。

 5.声優ありきのキャラ設定
   →ちとせが該当するとされた(吸血鬼の末裔ネタが声優由来ではないか)
    が、これは声優当人が否定しており信じるか信じないかの話。
    https://twitter.com/s_a_k_u_r_a_k/status/1101082237796179968

 6.先に登場した3人との扱いの差
   →どちらかといえばあかり達3人を気に入った人の声で、
    なぜ新アイドル7人で同じ扱いにしてやらなかったという意見。
    結果として当初不安視していたはずの新アイドルにも関わらず
    判官贔屓であかり達への受け入れが加速する現象が起きた。

    また、3人は既に話題の人物であり、仮にある程度厚遇されても
    「人気だから仕方ない」と納得できる余地があったが、
    ちとせと千夜は人気と証明する機会もなく渦中に放り込まれてしまったのもある。

 7.アンチの活性化
   →残念ながら、デレは大規模コンテンツ故に敵も多い。
    ただの逆恨みもいればファンからアンチに転じたものもおり、
    混乱に乗じてアンチが暴れまわったのも事実である。


 まとめると、
  ・意思表示をしない運営、狭まるSSR枠など、
   元々そこに至るまでに運営不信に至る事情(ボイス・SSR)が積り積もっていた
  ・運営に対しなるべく全アイドルの扱い向上するよう希望する意見があったが、

   意図してかせずか、VelvetRoseの登場はそれを否定する形になってしまった。
  ・全体的に苛立ったプレイヤー同士による発言の誤爆が相次ぎ、
   プレイヤーが他のプレイヤーに事実上のトドメを刺すケースも少なくなかった。
  ・ただでさえ人を選ぶキャラの上、理解が進みづらく誤解を招いた
 特にこの4点は抑えておいて欲しい事情であり、
 彼女たちに由来する原因はほんの一部であったことは理解いただきたい。
 
 



【6章】久川凪・久川颯編

 
VelvetRoseが巻き起こした嵐の後には虹が広がった、
 と形容するのも微妙な話だが、その後同様の登場の仕方で
 久川姉妹の凪・颯(miroir)が追加された。

   

 こちらもVelvetRose同様に否定的な声は多くあったのだが、
 VelvetRoseに比べれば明らかにその声は控えめであった。
 これも理由を簡潔にまとめれば

 1.慣れた
   →あきら、りあむの時同様によくも悪くも人は慣れるものである。
    運営の方針にもプレイヤー同士のいざこざにも。
 2.Fascinateの時点で去る人は去ってしまった
   →実際自分の周りでも十数名近くデレ自体を引退してしまっている
    また、引退せずとも諦観的になった人も多く見られた。
 3.万人向けの性格で特に誤解もなかった
   →単純にセリフが面白い凪、多少お調子者ではあるが礼儀正しく
    先輩アイドルへのリスペクトがある颯は馴染みやすかった。
    (Fascinateコミュと違い、ちゃんと先輩との交流がある)
    19・17のちとせ・千夜と違い14歳で多少の無礼も気にされなかった。
 4.特に新要素・見慣れない要素がないキャラ造形
   →まず姉妹アイドルという観点では最初から城ヶ崎姉妹がおり、
    双子アイドルは他マスには既に3組いる、逆に定番ポジションである。
    凪のトークも先に実装されたりあむに比べればどっこいどっこいで、
    特別違和感を感じる余地がなかった。
    O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!も重苦しさを感じない、さわやかポップス。実際筆者も好き。
 
 と、極端な話、miroirとVelvetRoseで実装が逆だったとすれば
 多少の差はあれどプレイヤーからの扱いも逆であったことは想像に硬くない。
 なので「どうしてVelvetRoseだけ色々言われなきゃいけないの」
 と問われれば筆者からは上記の回答となる。アイドルに責任はない。

 



【7章】新アイドルたちのその後

 その後程なくして第8回総選挙が開催された。

 7名も新規参加したこの回は結果を言えばシンデレラガールも無事交代、
 ボイス確定のアイドルが数名出る中、その中にりあむが名を連ねた。
 もともと話題に事欠かなかった彼女だし、その上VR登場による判官贔屓
 通称お気持ち表明文の乱発などから前向き・後ろ向き様々な票を獲得しての入賞であった。
 (そのため浮動票の大半が彼女に飲まれていったとする見解もある)
 プレイヤーも驚いてるしなんなら当の本人もデレステのイベントでめっちゃやんでる。
 その他凪が50位以内入賞を果たすなど、新アイドルは存在感を発揮することになった。

 同年2019年には7名の全員がSSRを実装。
 この追加の仕方も狙ったんだか狙ってないんだか、
 VelvetRoseはもっとも妬みを買いやすい総選挙期間に配置、
 (はっきり言ってこれで上位を取れるだろうなど微塵も思えないのだが)
 逆にあかりやあきら、りあむらは恒常SSRや月末限定SSR数の増えた頃に
 実装されており、波風の立ちにくいデビューとなった。

 またデレステ4周年記念曲True ColorsはGRAND MV実装に伴い
 従来の5人曲から9人曲に拡張、ちとせ・千夜・凪・颯が参加となった。
 当初はセットだった彼女たちも次第に色んなアイドルとカラム機会が増えた。
 幕張公演では久川姉妹が活躍し、大阪公演でもりあむ・ちとせ・千夜の晴れ舞台となる。
 
 モバマスには少しタイミングを遅れて7名全員分も実装。
 その後各1枚ずつSRが登場し、ぷちデレラもリリースされたことで
 より深くキャラを掘り下げできるようになった。
 努力が苦手なあかり、生きる実感を喜ぶちとせなど、
 新たな一面に好感を抱いた人も多いのではないだろうか。


 あれから年月が経ち、2018年下半期~2019年上半期に比べれば
 供給が増えたことで どうにか190名全員SSR化の兆し見え、
 界隈は穏やかになったように見える。
 (一方宙ぶらりん状態のユニット衣装SSR
  未だにユニット曲や
2枚目のSSRに恵まれないアイドルがいる、
  そもそも登場間隔の長さなど課題は据え置きであり、

  不満が別の場所にシフトしただけでとも言える)

 それでも今もなお否定的な声は聞くし、
 自分自身未だに当時傷つき去ってしまった知人を思い出してしまうが、
 こればかりはもう界隈にいる限りずっと付き合うしかないと思う。




【8章】おわりに

 個人的な願いだが、どうか新アイドルに否定的な声を聞いた時、
 「もしかしたら彼は単に新アイドルを毛嫌いしてるのではなく
  別のことに傷ついたそのせいなのでは」と1度考えてみて欲しい。
 (※当然のことだが、その上で目に余るのであればそこは我慢しなくていい。
   自分が傷ついたからといって他者を傷つけていい道理などない

 まとめたように不安・不信に至る過程があったこと、
 肯定しづらい事情があったことなど、当時の事情は複雑であり同時に根深い。
 例えば「新アイドルがLIVEに出てもサイリウム振らない」といった否定発言があっても
 それが何に起因するのかなどひと目ではわからないだろう。

 もちろん既にスポットライトの当たった子の担当からすれば、
 今の流れ(全員分のSSRを目指す、後発でボイスがついたアイドルの出番が集中する)
 は歓迎できるものと言い切れるものではないし、しないのも立派な思考。
 ゆえに「やっぱりなんで荒れたかわからん」も一つの見解である。

 だが当時のことをまとめ、整理することでなぜそうなってしまったのかが分かれば、
 あるいはそういった人に寄り添えなくても理解を示してあげられるかもしれない。
 今回本記事を執筆したのは自分の思考整理もあるが、
 当時何が起こったかわからなかった人の手助けになれば、という想いもある。
 
 今回同時投稿した印象調査の結果もこういった知識を持ってみると
 また別の発想が出てくるかもしれない。
 彼女たちに向かう様々な感情がいくらか可視化されている。


 筆者自身新アイドルをただのアイドルと見られない時期があり、
 葛藤もあり、新しく担当に迎えたPの熱弁もあり、やっと今に至る。
 今となっては彼女たちを否定することなどできないし、
 担当とも絡みが出てきてむしろ楽しみに思う日々である。
 (一方で正直なところもうこれ以上追加しないで欲しいというのもある。
  彼女たちを肯定することで
  「お、新アイドルウケたな。次行ってみよう」となるのはまだ勘弁願いたい)



 彼女たちの織りなす色がもまた、未来を描く夢と信じて。
                             おわり